
FX(外国為替証拠金取引)は「Foreign Exchange」の略称で、ドルや円など異なる通貨を売買することにより損益が生じる投資手法です。
例えば、ドルの価格が将来上昇すると予測した場合、買い注文を出します。
予測が的中し価格が上昇すれば利益が出ますが、予測が外れ価格が下落すれば損失を被ります。
価格が将来上昇するか、または下落するかを予測する、非常にシンプルなメカニズムです。
しかしFXでの損益発生のメカニズムは単純ですが、直感や無計画な取引で利益を出すことは容易ではありません。
安全な取引を心掛けるためにも、初心者はFX投資について仕組みやルールを理解することが重要です。
そこで本記事では、FX投資に関する専門用語や、取引ルールなどについて分かりやすく説明していきます。
FXに関する専門用語について
FX取引において、専門用語の理解は非常に重要です。
例えば、「レバレッジ」とは、少ない資金で大きな取引ができる仕組みを指し、
高いレバレッジは大きな利益をもたらす可能性がありますが、同時にリスクも増大します。
また、「スプレッド」とは、買値と売値の差を意味し、この差が小さいほど取引コストは低くなります。
その他にも、「ピップ」は通貨ペアの価格変動の最小単位を指し、多くの通貨ペアでは1ピップは0.0001の変動を表します。
これらはFX初心者が取引を始める際に知っておくべき重要な用語です。取引を始める前にこれらを理解することが、成功への鍵となります。
また、FX取引にはリスクが伴うため、自己責任で行うことが重要です。
1.スプレッドとは
FX取引において利益を得るためには、手数料(取引コスト)を低く抑えることが重要です。
FX取引では、「スプレッド」と呼ばれる実質的な手数料が存在します。
スプレッドは売値(Bid)と買値(Ask)の差であり、この差が大きいほど(スプレッドが広いほど)コストが増加し、
投資家にとって不利な条件となります。そのため、スプレッドの狭さはFX会社選びの重要な基準となります。
FXの取引ツールでは、売値が左側、買値が右側、スプレッドが中央に表示されるのが一般的です。

上の図に示されているように、米ドル/円の売値が110.000円、買値が110.003円である場合、
その価格差の「0.003円(0.3銭)」はスプレッドと呼ばれます。
スプレッドの値が小さい場合は「狭い」と、大きい場合は「広い」と表現されます。
コストの観点からみると、スプレッドが狭いほうが投資家にとっては有利であり、広いほうが不利になります。
このため、スプレッドは投資家がFX会社を選ぶ際の重要な基準の一つとなり、FX会社間の差別化にもなっています。
スプレッドの単位
スプレッドの単位には「銭」と「pips」の2種類があります。
通常、日本円を含む通貨ペアは「銭」で、外貨同士の通貨ペアは「pips」で表示されます。
■銭とは
銭は日本円の1円未満の金額を表す単位で、1円は100銭(0.01円は1銭)に相当します。
通貨ペアのスプレッド、例えば米ドル/円やユーロ/円などを表す際に使用されます。
■pipsとは
「ピップス」とは、FX取引で用いられる共通の単位です。
外貨通貨ペア、例えばユーロ/米ドルやポンド/米ドルのスプレッドを示す際に使用されます。
また、円に関連する通貨ペアにおいても1pips=1銭(0.01円)を表すのが一般的です。
スプレッドで稼ぐコツ
スプレッドは、FX会社や通貨ペアによって狭さが異なるため
よりスプレッドが狭いFX会社で取引をした方が、投資家にとって低コストの取引が可能です。
また下記のような状況や時間帯においては、スプレッドが拡大する要因となるため
出来るだけ避けるように注視しておく必要があります。
これらのスプレッドが拡大するリスクを回避しつつ
より狭いスプレッドを提供するFX会社と取引することを心掛けていきましょう。
2.スワップポイントとは
スワップポイントは、二国間の金利差から生じる損益のことです。
FX取引においては、通常の取引利益に加えて、スワップポイントの蓄積から得られる利益も期待できます。
「金利が高い通貨」と「金利が低い通貨」の間の金利差がスワップポイント(利益)となることが下図で示されています。

スワップポイントが常に利益をもたらすわけではなく、損失を意味する「マイナススワップ」の存在も認識する必要があります。
低金利の通貨を売り、高金利の通貨を購入する場合、スワップポイントはプラスになります。
しかし、その逆で高金利の通貨を売り、低金利の通貨を購入すると、マイナスになることがあります。
また、金利の状況によっては、スワップポイントがプラスからマイナスへと変わることや、
売りと買いの両方でマイナスになることも考えられます。
そこで下記にて、買いポジションでスワップポイントを狙って運用する「メリット」と「デメリット」を解説していきます。
スワップポイントを狙うメリット
スワップポイントを狙う利点は、通常のキャピタルゲイン(売買差益)に加え、
保有している間に得られるインカムゲイン(収益)も得られることです。
以下の図に示されているように、スワップポイントは保有期間に応じて蓄積されます。

このため、スワップポイントからの収益は毎日確実に増えることが期待できます。
ただし、市場の変動により、スワップポイントの利益を超える取引損失が生じる可能性もあります。
その一方、取引益を得られれば、スワップポイントと併せて二重の利益を目指すことができます。
特に、中長期の取引益を目指す場合は、スワップポイントが増加するため、この利点はさらに大きくなります。
スワップポイントを狙うデメリット
スワップポイントを狙う際のデメリットは、通貨ペアによってはマイナススワップになるリスクがあることです。
この場合、通常のスワップポイントと反対に、金利差額を支払うことになります。
「高金利通貨を買って、低金利通貨を売る」組み合わせではスワップポイントがプラスになりますが、
「低金利通貨を買って、高金利通貨を売る」という組み合わせではスワップポイントがマイナスになります。
纏めると、下図のような表になります。

このように、通貨ペアの買いと売りの組み合わせ次第で、マイナススワップが発生し金利差の支払いが必要になることがあります。
これが主なデメリットです。
スワップポイントで稼ぐコツ
スワップポイントを狙った運用をするにあたって、稼ぐコツは2つあります。
■通貨ペアを意識する
通貨ペアを意識するとは具体的に、「スプレッドが狭い通貨ペアを選ぶ」ということにあります。
スプレッドは「売値と買値の差」を指し、FX取引における実質的な手数料となります。
直接的な手数料が徴収されるわけではないものの、取引ごとに生じるコストであり、実質的な手数料と考えられます。
スプレッドによるコストを低減すれば、スワップポイントからの利益を増やすことができます。
従って、狭いスプレッドの通貨ペアを選択することは、スワップポイントを通じて利益を得るための重要なポイントです。
■スワップカレンダーを確認する

スワップポイントはFX会社ごとに異なり、通常は短期金利市場の金利や為替レートを基に計算されます。
スワップポイントの付与ルールも各FX会社によってまちまちです。
多くのFX会社がスワップポイントカレンダーを提供し、通貨ペア毎に日々のスワップポイントを記録しています。
このカレンダーを利用して「いつ」「どれだけ」スワップポイントが付与されたかを確認することで、
運用計画を立てていくことが、スワップポイントで稼ぐコツになります。
3.レバレッジとは
レバレッジとは、FX取引において証拠金として預けた資金を基に、その額を上回る金額の取引が可能になるシステムです。
レバレッジを利用することで少額の資金で大きな取引が行える利点がありますが、同時に大きな損失を招くリスクも伴います。
例えば、外貨預金の場合、10万円の資金では10万円分の投資しかできませんが、
FX取引ではレバレッジを利用することで、10万円の資金で以下のような額の取引が可能になります。
■10万円の資金(証拠金)での取引可能金額
| 倍率 | 取引可能金額 |
|---|---|
| レバレッジ3倍 | 30万円 |
| レバレッジ10倍 | 100万円 |
| レバレッジ25倍 | 250万円 |
上記のようにレバレッジを活用して取引することを、一般的に「レバレッジをかける」「レバレッジを効かせる」と言います。
もちろん、レバレッジをかけることにもメリットとデメリットが存在します。
そこで下記にて、レバレッジをかけてFX取引を行う場合の「メリット」と「デメリット」を解説していきます。
レバレッジをかけるメリット
レバレッジをかけるメリットは2つあります。
■少ない資金で取引が出来る
25倍の最大レバレッジで取引を行う場合、取引額の25分の1に相当する資金(証拠金)が必要です。
たとえば、100万円の取引を行うには、最低でも4万円の証拠金が必要になります。
一回の取引に必要な最低限の資金を「必要証拠金」と呼びます。
■資金効率を良くすることが出来る
レバレッジ取引の最大の利点は、成功した場合に少額の資本で大きな利益を得ることができるため、資金の効率が良いということです。
例えば証拠金が10万円で、レバレッジ倍率のみ「3倍・20倍」と約7倍の差があったとすると、
レバレッジ20倍の方は3倍と比べて、利益が約7倍得られることが出来ます。
このように、同じ証拠金と為替レートでも、レバレッジ倍率が高い方が大きなポジションを建てることができるため、
利益も大きくなるのです。
レバレッジをかけるデメリット
レバレッジをかけるデメリットは3つあります。
■損失額が多くなる
同じ証拠金・為替レートでも、レバレッジが大きいほど損失も大きくなります。
例えば証拠金が10万円で、レバレッジ倍率のみ「3倍・20倍」と約7倍の差があったとすると、
レバレッジ3倍の方は20倍と比べて、損失が約7倍に膨らみます。
このようにレバレッジを使用すると、倍率が高いほど利益の可能性も増えますが、同時に損失のリスクも拡大します。
損失が発生し、口座の有効証拠金が基準を下回ると、保有ポジションが強制的に決済される(ロスカット)か、
口座に追加の資金を入れる(追証)必要が生じるリスクが伴います。(下記記載)
■ロスカットされることがある
「ロスカット」という用語は、トレードに伴う損失が一定の範囲を超えた場合に、
証拠金の水準が所定の限度を下回ると、自動的に全ての取引が決済されるシステムを指します。
適切な資金管理やレバレッジの利用状況を理解していなければ、
市場の変動によってロスカットが発動する具体的なポイントが予測できず、取引が強制的に終了するリスクが増加します。
■追加証拠金を必要とする場合がある
口座の資金が必要な証拠金額を割り込むと、一部のFX会社では自動的にロスカットが行われ、追加の証拠金が要求されることがあります。
たとえば、取引額が100万円の場合、最低でも4万円の証拠金が必要です。
この最低限の証拠金で取引を行っている状況で、少しでも損失が発生すると、口座の資金はすぐに4万円未満になり、
追加資金の支払いが必要になる可能性があります。
レバレッジで稼ぐコツ
レバレッジをかけるにあたって、稼ぐコツは2つあります。
■レバレッジを抑える
最初の方は、レバレッジの倍率を控えめに設定することが重要です。
低いレバレッジで取引を行い、市場の動きや資金管理の基本を学びましょう。
取引量や必要証拠金を通じてレバレッジの調整方法に精通した後、市場の変動に対応できるようになれば、
徐々にレバレッジを高めていくことができます。
■損切り設定をする
レバレッジ取引では、損失が拡大する可能性があるため、損失が特定のレベルに到達した際には、
損失を限定する措置(損切り)が必要となってきます。
自己の裁量で損切りを行うことが困難な場合、逆指値注文(ストップ注文)を利用することで、
事前に設定した価格に達したときに、自動的に損切りが行われます。
レバレッジを賭ける際には、同時にリスクを抑えることも意識することが大事になります。
4.ロスカットとは
ロスカットとは、投資家が預け入れた資金(証拠金)を超える損失が出ないように、
一定の損失額を超えた場合にFX業者が自動的に取引を閉じるシステムです。
これは投資家を守るための措置であり、通常は預けた証拠金を超える損失は生じません。

例えば、有効証拠金が必要証拠金を下回った場合(証拠金維持率が100%以下になった場合)、
損失が大きいポジション(建玉)から順にロスカットが行われます(証拠金維持率が100%以上になるまで続けられます)。
※ただしロスカット詳細についてはFX会社ごとに違うため、取引するFX会社が定めるロスカットルールを御覧ください。
有効証拠金とは?
有効証拠金とは、口座残高に未実現の損益(含み益や含み損)を加えたものを指します。
含み益が増加すれば有効証拠金も増加し、含み損が増加すれば有効証拠金は減少します。例えば、ポジションを一切保有していない場合、口座内の証拠金と有効証拠金は同額になります。
必要証拠金とは?
必要証拠金とは、FX口座に最低限預け入れしなければならない資金です。
FX取引ごとに提供する取引コースによって預け入れる資金が変わります。
また必要証拠金がいくらかによって、ロスカット水準が変わります。
ロスカットを回避するコツ
ロスカットを回避するコツは2つあります。
■損切り設定をする
ロスカットリスクを減らしたい場合は、「損切り」を実施することが重要です。
損切りは損失を確定する行為であり、ロスカットに比べて損失を小さく抑えることができます。
損切りとロスカットは、ポジションを決済する点では同じですが、以下のような明確な違いがあります。
損切り:自らの意思で損失を最小限に留めるために行う行動。
ロスカット:FX会社が強制的に取引を決済し、予期せぬ大きな損失が発生すること。
損切りは計画的なポジションの決済を指し、ロスカットは予期せぬポジションの決済を意味します。
これが意図的か否かは心理的な負担に影響を及ぼし、それが将来のトレーディングの成果に大きな影響を与えることになります。
損切りを行う際には、「取引ごとに発生する損失の割合が一定の%に達したら損切りを行う」という明確なルールを設定すると良いでしょう。損切りの方法は様々ですので、以下の記事を参照して、自分に適した損切りの方法を見つけてください。
■低レバレッジで取引する
FXには、預け入れた資金(証拠金)を担保にして、その何倍もの大きな取引を可能にする「レバレッジ」というシステムが存在します。
レバレッジを利用した取引では、同じ証拠金であっても、より大きな利益を見込むことができます。
取引が成功すれば大きな利益が期待できますが、失敗した場合は同じくらいの大きな損失を被るリスクがあります。
レバレッジ倍率が高ければ高いほど、ロスカットのリスクも増加します。
取引に不慣れな初心者は、低レバレッジでの取引から始めることをお勧めします。
まとめ
FX取引をするにあたり、今回紹介した用語やルールは勉強した方が、利益を得る可能性は高まります。
ただし、「勉強していれば確実に利益を得られる」とは限らず、勉強することでより良い結果が得やすくなるというだけです。
当然、実践を通じて経験を積むことが必要になります。
一方で、「実践を通じた経験すること」は、「勉強すること」を超えて利益を得るスキルが身につく可能性が高くなります。
実践における学びでは、「回数・時間」だけでなく、「質」の重要性も意識することが大切です。
FXには、ここで紹介した用語以外にも様々な専門用語があります。
何十種類もある専門用語を全て覚えるのは、時間がかかります。
最低でも今回紹介した4つの専門用語はマスターし、実践で活用出来るようにしましょう。